双極性障害とは
高揚した気分やイライラがみられる「躁状態」と気分の落ち込みや意欲の低下がみられる「うつ状態」を繰りかえし、うつ病とともに気分障害に分類される精神疾患のひとつです。一般的に躁うつ病と呼ばれることもあります。躁状態が著しい「双極Ⅰ型障害」と軽躁状態を呈する「双極Ⅱ型障害」に分類され、両者を合わせると人口の約0.7%が罹患するといわれています。はじめはうつ状態から発症することが多く、軽躁状態になっても双極性障害の症状であることに気づかれないこともあるため、海外の報告ではうつ状態の受診者の約20%が双極性障害であるといわれています。
発症のメカニズムは他の精神疾患と同様にまだ十分に解明されていませんが、もともとの素因(なりやすさ)に、心身のストレスが加わることで発病すると考えられています。
双極性障害の症状
双極性障害では「躁状態」となる時期と「うつ状態」となる時期では全く異なった症状が出現します。躁状態とうつ状態では下記のような症状がみられます。それぞれ、すべての症状が同時期にみられるわけではありませんが、いくつかの症状が当てはまる場合には、注意が必要です。
- 躁状態の症状
- うつ状態の症状
① 高揚気分(晴れやかな気分、ハイテンションな状態)
② イライラ・易怒性(些細なことでいらついたり、怒鳴ったりしてしまう)
③ 自尊心の肥大(自分がとても偉くなったように感じる)
④ 睡眠欲求の減少(眠らなくても平気になる)
⑤ 多弁(猛烈な勢いで話し続ける)
⑥ 観念奔逸(かんねんほんいつ:考えが次々と浮かんで思考がまとまらない)
⑦ 注意散漫(一つのことに集中できず、様々なことに関心をもつが持続しない)
⑧ 活動性増加(非常に行動的で、疲れを感じず、やりすぎてしまう)
⑨ 困った結果になるような快楽的活動への熱中(浪費、スピード運転など)
① 抑うつ気分(気持ちが落ち込み、気が滅入る。ときにイライラもある)
② 興味・喜びの喪失(以前楽しめていたことが楽しくない、世の中のことに関心がなくなってしまう)
③ 食欲低下(食べ物がおいしく感じられない、味がしない)
④ 不眠・過眠(寝付きが悪くなる、夜中に何度も起きる、逆に寝てばかりいる)
⑤ 精神運動制止・焦燥(話し方や動きが遅くなる、他の人から見て明らかに落ち着かない)
⑥ 易疲労感(疲れやすく、歯磨きや入浴などもおっくうになる)
⑦ 無価値感・罪責感(自分には価値がない、こうなったのは全て自分のせいだと感じてしまう)
⑧ 思考力・集中力低下(新聞やテレビの内容が頭に入らない、本が読めない)
⑨ 死についての反復思考(消えてしまいたい、死にたいと考え、実際に行動に移そうとしてしまう)
うつ状態では、上記の①〜⑨の症状以外にも、めまいや頭の重い感じなど、からだの不調として出現する症状もみられます
(詳しくは、うつ病(リンク先)をご覧ください)。
双極性障害の治療について
双極性障害の治療には、薬物治療、心理社会的治療が重要です。うつ病とも共通しますが、必要に応じて十分な休養をとってこころとからだをしっかりと休ませることも大切です。また、状態の悪化に関連する生活上のできごとがある場合には、ストレスを減らす工夫を考えることが大切です。周囲の方とも相談しながら再発を予防するための環境調整を行っていきます。
- 薬物療法
双極性障害の薬物療法の目的は、躁状態を治療すること、うつ状態を治療すること、再発を予防することの3つです。
薬物療法の中心は気分安定薬で、上記の3つの治療目的のために利用されます。古くから用いられている炭酸リチウムの他、てんかんの治療などでも使われるバルプロ酸ナトリウムやカルバマゼピン、オランザピンやアリピプラゾールなどの抗精神病薬などの薬がこれに該当します。
躁状態が著しい場合には鎮静作用のある抗精神病薬が、不眠に対しては睡眠導入剤が補助的に使われます。ある程度状態が落ち着いたあとは、再発予防のために気分安定薬を継続することが大切です。治療をしないまま経過すると、徐々に良い時期(症状がない時期、寛解期とも呼ぶ)が少なくなっていく可能性があります。