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統合失調症

統合失調症

統合失調症とは

統合失調症は思春期から青年期に発症し、本人を批判する幻聴や被害妄想が出現し、まとまりのない言動や自発性の低下などをきたす精神疾患のひとつです。人口の約0.7%の方が罹患するといわれており、まれな疾患というわけではありません。
発症のメカニズムについてはまだ十分に解明されていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることで症状が出現すると考えられています。

一般的には慢性的に経過し、身辺整理、対人関係、職業・学業における機能低下をもたらすことが少なくありません。
近年では、すぐれた治療薬が開発されたり、ケアの技法などが考案され、早期に適切な支援を受けることが重要であると言われています。

統合失調症の症状

はじめは元気がなくなり、落ち込んでいるように見えることが多いですが、次第に幻聴が聞こえたり、妄想が出現したりするようになります。統合失調症は多彩な症状がみられますが、大きくは以下の3つに分けることができます。
  • これまでなかった症状が出てくる(陽性症状)
  • ① 幻覚

    統合失調症では、自分のことを悪く言うような幻聴(幻声)が出現することが多くあります。

    ② 妄想

    自分の身に何か悪いことが起きるのではないか、という被害妄想が多くみられます。本来は関係のない出来事を自分に関連付けてしまう『関係妄想』、じろじろと他人に見られているという『注察妄想』、尾行されているという『追跡妄想』なども被害妄想に含まれます。

    ③ 自我障害

    自分の行動や考えが、誰かに操作されているような感覚を指します。自分の考えや行動が操られているように感じる『作為体験』、自分の考えが声になって聞こえてしまうと感じる『考想化声』(こうそうかせい)、自分の考えが他人に勝手に伝わってしまっているような感覚である『考想伝播』(こうそうでんぱ)などがあります。

  • できていたことが難しくなる、自発性が低下する(陰性症状)
  • ① 会話や行動がまとまらなくなる

    話題がとんだり、ピントがずれてしまう、相手の考えや話をつかみにくくなる、などの変化がみられることがあります。
    作業のミスが増えたり、時間がかかるようになったりすることもあります。

    ② 感情面の変化

    不安や緊張感がなかなかとれず、一方で、表情が硬く変化に乏しくなり、感情表現が苦手になることが少なくありません。

    ③ 思考や行動の自発性低下

    仕事や勉強、片づけなどをしようという意欲がわかなくなり、なにもせずに時間が経ってしまったり、着替えや洗面などにあまり関心がないようにみえたりすることもあります。他人と交流を持とうとしなくなり、ひきこもりがちになることもあります。

  • 認知機能障害
  • 作業記憶、実行機能の障害

    同時にいくつものことを言われると混乱してしまったり、ミスが増えてしまったりすることがあります。
    症状としてはとらえにくいですが、日常生活の多くの場面に影響して生活のしづらさをもたらします。
    認知機能検査等により評価します。


統合失調症はこれらの症状のすべてがみられるわけではなく、また個人差も大きい疾患です。
診断については、専門医に相談することが大切です。

統合失調症の治療とケア

統合失調症は図のように、症状による生活への影響とともに、生活のしづらさや人生の行き詰まり感による症状への影響が循環してしまうことが少なくありません。症状への適切な対応とともに、ご本人が望む生活や人生のあゆみへのバランスの良い支援が必要になります。

✔ 精神症状への対応

薬物療法

薬物療法には、幻覚や妄想、不安・緊張感、不眠などの症状を軽減する効果と、症状が安定したあとの再発予防の効果があります。使用されるお薬は、抗精神病薬や睡眠導入剤など、ご本人の状態にあわせ、またご本人のご希望を尊重しながら主治医と相談して決めていきます。最近では、錠剤以外にも持効性注射薬、貼り薬なども登場し、選択肢が広がっています。

精神療法、心理療法、リハビリテーション

統合失調症の症状と付き合いながら、日常生活を安心しておくるため、医師、看護師、作業療法士、心理士、精神科保健福祉士などのスタッフとともに行う治療です。薬物療法と組み合わせることで、症状の安定化を目指すことができます。症状や今起きていることについて理解を深めたり、症状への対処方法を考えたり、リハビリテーションを組み合わせて行っていきます。

✔ 生活・人生の行きづまりへの支援

生活支援、生活臨床

薬物療法により一旦は症状が落ち着いたとしても、生活場面での苦労や将来の見通しが立たない状況が続くことは大変な苦痛です。やがて症状の再発や増悪をきたしてしまうことも少なくありません。
近年では、精神科訪問看護やホームヘルパーなどを利用して生活面の支援を受けながら、自分らしい暮らしを組み立てている方も多くなってきました。また、デイケアや作業所などに通って日中活動を行うことで、生活リズムを整えていくことも有効です。

将来について考えるとき、なかなかやりたいことが見つからなかったり、実現が難しそうに感じられることもあります。そのような時には、ご本人がどのような人生を歩んできたか、どのような家庭で育ち、周囲の人や文化からどのような影響を受けたのか、などを丁寧に聞いていくと、今後につながるヒントが見えてくることがあります。

『生活臨床』は、前述したようなご本人の生活史や家族史をひも解き、その方の”
価値意識”を見出して、それを生活の中で実現しようとする臨床的アプローチです。目の前にある症状や問題のみにフォーカスするのではなく、生活や人生の行き詰まりの解消を目指し、当事者、家族、支援者が「知恵を出し合う」ことが特徴です。

家庭でのケア

ご本人は不安や周囲への不信感などを抱えて閉じこもりがちになりますので、まずはご家族が「あなたの味方だよ」というメッセージを伝えるようにしましょう。焦らずにじっくりとご本人の話をよく聞きくことも大切です。ミスを責めたり、批判することを避けて、出来ていることには感謝を伝えるなど、普段からの温かい言葉のやり取りを心がけましょう。ご本人が安心して過ごせる静かで穏やかな家庭の雰囲気づくりができるとさらに良いと思われます。

良好な治療や支援を行うには、主治医を交え、ご本人、ご家族が連携して取り組んでいく必要があります。そのためには、ご家族の病気ヘの理解や適切な接し方が大切になってきます。まず統合失調症がどのような病気なのか、ご本人に起きていることやつらさについて共感的に理解してあげることが大事です。主治医に伝えたいことや疑問があれば率直に質問し、良好なコミュニケーションを図っていくようにしましょう。

こんな時どのように声掛けをしたらよいのだろうか、など悩まれることも多いと思います。同じような経験をされた他のご家族のお話が大いに参考になることがあります。地域の家族会が講演会や勉強会を行っていますので、ぜひ足を運んでみましょう。
※地域の家族会の連絡先については、役所や保健所などで聞くことができます。