要望を上手に伝える方法【アサーション】
このブログでは女性のメンタルヘルスについて、助産師、精神科ナースを経て、公認心理士から、皆さんにお役に立てる事をお伝えできたらと思っています。ご参考になれば幸いです。
✔アサーションとは
職場や家庭、子育ての場面では、他者とのよい協力関係が必要になりますが、その際には適切なコミュニケーションが大切です。時には、自分の要望をしっかりと相手に伝え、ネゴシエーション(交渉)する必要がある場合もあります。
今日は”自分の気持ちや考えを上手に主張するする方法”について、ご紹介させて頂きます。
ちょっと大変なことを他の人にお願いしたり、逆にお願いされた時に断ったりすることは、ストレスに感じやすいですよね。自分も、そして相手も大切にしながら、自分の要望や気持ちなどをバランス良く、上手に伝えられるのが理想です。そんなときに役立つコミュニケーションのスタイルとして、【アサーション】があります。
アサーション(assertion)は直訳すると、「主張」や「断言」という意味ですが、心理学的な用語として使われる場合には、前述のような対人関係に配慮したバランスの良いコミュニケーションの方法を指します。【アサーティブ】とは、他人のニーズを聞き、尊重すると同時に自分のニーズも伝えることができることをいいます。
一方で、要望を伝えたり主張したりする時に、相手への配慮が足りなかったり、一方的に自分の言い分を通そうとばかりになると、どうしてもカドがたってしまい、相手を怒らせてしまったり、気まずくなったりしてしまうことがあります。このようなコミュニケーションのスタイルは、アサーティブに対して、【アグレッシブ】(攻撃型)なコミュニケーションと呼びます。逆に、自分の感情や要望を抑え込んで、相手を優先しすぎるスタイルは、【ノンアサーティブ】(非主張型)と呼び、こちらも良い協力関係にはなりません。自分も相手も大切にした自己表現の方法がアサーションです。
✔アサーションの方法
アサーションを使って、上手に主張する方法をみてみましょう。
①相手が話を聞いてくれそうな場所や時間を選ぶ
だれでも疲れていたり、お腹がすいていたり、急いでいる時にお願いごとをされるのはあまり良い気持ちはしません。
相手が話せる時を見計らうことは、要望を伝えるうえで、大切な要素です。
「今、少し話せる?」と尋ねる事で、相手の状況を確認するも良いと思います。
②相手の状況や気持ちはわかっていることを伝える
まずは、相手の置かれている状況や気持ちを想像して、それに共感していることを伝えましょう。
そうすることで、一方的な伝達にならない雰囲気が生まれてきます。
③その上で、自分の状況や気持ちを伝える
「私」を意味する英語の一人称I(アイ)を使った「Iメッセージ」(私は〇〇と思う)を使うと相手を責めずに伝えやすくなります。
それでは、具体的な場面を想定してみましょう。
例えば、育休中の子育てママが、夕食後にスマホを見ながらソファに横になっているパートナーに家事を手伝って欲しい場面です。家事分担などをあらかじめ決めているご夫婦も多いかもしれませんが、今回は特に決めていない場合を想定します。
食器が積み重なったキッチンのシンク中をみながら、いらっとした口調で、「ねぇ、お皿あらってよ」と伝えたとします。
さらに、「スマホなんか見てないで」なんて枕詞にいれたとしたらどうでしょうか?
きっと険悪なムードになりますよね。
ではアサーションをを取り入れてこんな言い方はどうでしょうか。
パートナーがスマホを見るのをやめたタイミングを見計らって(①)、「仕事で疲れているよね(②)。今日は私も疲れていて、赤ちゃんのお世話でなかなか家事が進まなくて、手伝ってほしいと思っているの(③)」
そうしたら、察しのいいパートナーであれば、山になったお皿を見て「気づかなくてごめんね」と言って気持ちよく手伝ってくれるかもしれません。
言われないと気づかないタイプであれば(だいたいがこちらです)、「何をやればいい?」と言われたら、「お皿を洗ってもらってもいい?」と、あくまで相手が自分で決めてもらえるように伝えると良いでしょう。
相手が要望に応えてくれた時に、「ありがとう!助かったわ」とお礼をしっかりと伝えると、相手の行動を強化する(次回から行動にうつしやすくなること)にもつながります。
なんとなく計算高い会話と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、自分も相手も気持ち良く助け合えるのであれば、これも相手への思いやりではないでしょうか。
とはいえいつも冷静に対処できるわけではなく、アサーションを使う前にとっさの言葉や態度に感情が先立ってしまうことも多いでしょう。コミュニケーションがうまくいかないな、と悩んでいるときには、まずは自分の主張のやり方にどんな傾向があるのかを知るだけでもヒントになるかもしれません。
当院のカウンセリングではDESC法を用い、ワークシートを使って、アサーションの練習をしています。
アサーションをできる時、できる事から取り入れてみてはいかがでしょうか。相手はなかなか変わりません。まずは、自分から工夫してみることいいですよ。